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【洋書】Asha & The Spirit Bird

前の記事でReadathonしたことを書きましたが、最後に選んだ1冊で素晴らしい本に出会いました。これはブログで良さを伝えたい!感想を書きたい!と落ち着かなくなるほどの本でした。

 

 

あらすじ

11歳のAshaは出稼ぎに行っている父から、4か月も連絡と仕送りが途絶えていることを心配していたが、ある日借金取りがAshaの家に急に押しかけてきてきた。Ashaたちのトラクターを担保に奪って、借金を返せなければ6週間後に家を明け渡してもらうと脅しに来たのだ。

それまでに父を見つけて家に連れてくれば全てが解決すると考えたAshaは、遠くヒマラヤを越えた先にある街に住むはずの父の元へ一人で旅立つ...。

 

感想

全部入り

愛、家族、友情、勇気、信じる心、神、冒険、良い大人&悪い大人、子どもたちに知っておいて欲しいことをぎゅっとまとめると、こういう物語になるのかというお手本のような本です。

読んでいる最中に、ドイツの児童作家エーリヒ•ケストナーの作品を思い出しました。子どもは子どもなりに考えて知恵を捻って課題を乗り越えるものなのだ、と教えてくれます。

大人はこの本を通してAshaと一緒に冒険して、子供のころのピュアな気持ちに戻れます。長い冒険のあとの最後の数章は涙無しでは読めません。

 

キャラクター

主人公のAshaは思い立ったらすぐ行動、超自然的な力や自分の直感を信じる女の子。一方、親友のJeevanは星博士で理性的、ファクトベースで行動する男の子。真逆のコンビがお互いのキャラクターの足りない部分を埋めあって、それぞれの良さを際立たせています。

一見しっかりしてそうなJeevanですが、うっかり騙される場面もあるのがリアルでした。Ashaは勘を働かせて警戒してたのにね。

 

ページターナー

児童書でページ数が少なく章割りが細かめなのですが、一旦この章で終わりにしとこうと思うと、連ドラのごとく章終わりで新事実や新しい苦難が出てきて、全く栞をはさませてくれません。

著者は11歳のAshaに一息つかせる間もなくどんどん試練を与えるので、親心から心配で心配で、Ashaの行く先が気になりページをめくる手が止まりませんでした。いつもの自分が読むスピードよりも速く読み終わりました。

 

ファンタジー嫌いを黙らせるファンタジー

冒険の道中、キーとなる場面で超自然的な力や現実ではあり得ないことが起こります。私は普段ファンタジー的な要素がある本は、嫌いとまでは言いませんが読む気がなくなることが多いです。

著者はそんな私に「Ashaの道程でこれが出てくるのは当然だよね」と有無を言わせない納得感をもたせて物語を進めていきます。読み終わった後、まずAshaたちの世界観があってその中の要素にそういえばファンタジーがあったね、と気づくような本でした。

 

異国情緒・自然描写

第1章が始まる前にヒンディー語パンジャブ語の用語集がまとまっていて、気分を盛り上げてくれます。物語の中でも子ども向けの平易な言葉でインドならではの食べ物や生活用品、普段の暮らしや街の様子、インドやヒマラヤの美しい自然描写を堪能できます。あとがきで、インド出身の著者と聞いて納得です。

 

装画・装丁デザイン

この本を購入したきっかけがエキゾチックで美しい表紙でした。エメラルドグリーンにインドらしい植物、動物、風景が並び、銀色でタイトルが描かれています。裏表紙がまたユニークで紫ベースになっています。紙で持っておきたいと思わせる本です。 

 

最後に

いくつか気に入っている表現を引用します。

The words pour out of my mouth like boiling lava.

Ashaがものすごく怒っているシーン。怒りにlavaを使うとは激怒している様子が目に見えるようです。

 

The sweet scent of jasmine blows in through an open window, filling me with memories of home, Ma, Roopa and Rohan, Moormanali.

別のことで頭がいっぱいの時に、ふとAshaが家族を思い出す場面。胸が切なくなります。

 

'...but the one thing that has kept you strong is your hope and what you believe'

苦難を乗り越えたからこそ、Ashaが周りの人から言ってもらえる言葉だと思います。

 

 

著者の公式サイトです。2作目がすでに出版されていて、3作目も来月出版ですね。

またまたこの美しいデザイン。買います。

www.jasbinderbilan.co.uk

 

本当に素敵な本なので、翻訳が出てくれたら嬉しいです!